鍵のレスキューがなぜ業務停止になったのかを考察
2022年2月25日に鍵のレスキューを運営する株式会社鍵とRセキュリティ株式会社が消費者庁から業務停止6ヶ月の処分を受けました。それに対し、株式会社鍵は不服としています。
今回は、なぜ鍵のレスキューが業務停止を受けたのか、なぜ不服としているのか、高額請求に遭わないための方法を解説します。
追記:鍵のレスキューは4月1日に裁判所から業務停止命令の執行停止決定が言い渡されたため、4月4日に業務を再開しています。
鍵のレスキューが業務停止になった理由
今回、鍵のレスキューが業務停止になった理由を消費者庁の資料から考察します。まずは、消費者庁の処分となる事実をご覧ください。
4 処分の原因となる事実
Rセキュリティは、以下のとおり、特定商取引法に違反し、又は同法に規定する指示対象行為に該当する行為をしており、消費者庁は、訪問販売に係る取引の公正及び役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
(1)役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為(特定 商取引法第6条第1項第5号)
Rセキュリティは、遅くとも令和2年10月以降、株式会社鍵と連携共 同して、訪問販売に係る役務提供契約の解除を妨げるため、実際には、本件役務提供契約はクーリング・オフをすることができるにもかかわらず、 特定商取引法第5条の書面を受領した日から起算して8日以内に本件役務 提供契約のクーリング・オフを申し出た消費者に対し、「弊社の方では、あ の、クーリング・オフの方は受け付けられない形になってしまうんですが。」、「金額の件について、クーリング・オフの受け付けは、ちょっとやはりやっ ぱり難しいんですけれども。」、「お客様からご依頼があって弊社の作業員の 方が伺っておりますので、こちらクーリング・オフというのが難しくなっ ておりまして。」、「当社としてはクーリング・オフは受け付けられないとい う形になっていますので。」などと、あたかも本件役務提供契約をクーリン グ・オフすることができないかのように告げている。
(2)役務提供契約の解除によって生ずる債務の一部の履行を拒否する行為(特定商取引法第7条第1項第1号)
Rセキュリティは、遅くとも令和2年12月以降、特定商取引法第5条 の書面を受領した日から起算して8日以内に、適法に本件役務提供契約の 解除をした者に対し、正当な理由なく、本件役務提供契約に基づき受領し た金銭の一部を返還しないなど、本件役務提供契約の解除によって生ずる 債務の履行の一部を拒否した。
(3)訪問販売に係る役務提供契約の解除につき迷惑を覚えさせる仕方で妨げ る行為(特定商取引法第7条第1項第5号の規定に基づく施行規則第7条 第1号)
Rセキュリティは、令和2年6月から同年8月までの間に、特定商取引 法第5条の書面を受領した日から起算して8日以内に書面により本件役務 提供契約のクーリング・オフをした消費者に対し、少なくとも約1か月半 もの長期間にわたり、消費者からの依頼を受けて訪問しておりクーリン グ・オフの適用除外に該当するため、クーリング・オフには応じられない
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旨繰り返し主張するなど、訪問販売に係る本件役務提供契約の解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げた。
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_220225_01.pdf
今回、鍵のレスキューはクーリングオフを拒否したとして特定商取引法に抵触し、業務停止処分を受けました。
鍵のレスキューが業務停止を受けた事例
今回、消費者庁の資料にはクーリングオフを受けなかった事例が3件載っています。それぞれ簡潔に紹介します。
事例1
令和2年10月、鍵開け4980円と言うホームページの文言を見て依頼。高くても2万円程度だと思ったそうです。電話の時点では金額が伝えられませんでした。
実際に作業員が来て見積もりを行い、10万円の契約を結びました。そのを怪しんだ親族が消費者センター経由でクーリングオフを依頼しましたが、「クーリングオフができない」と言って拒否したそうです。
事例2
令和2年12月、車の鍵作成の依頼をしました。電話の時点では「2~3万円くらいだが、実際は現地で見ないとわからない」とのこと。現地では10万円と言われ、契約を締結。クーリングオフを申し出たが、「お客様からの依頼を受けたので、クーリングオフにはならない」と拒否。
事例3
令和2年6月、自宅の鍵開けのために電話。その時点では料金を伝えられず、現地で見積もりを行うと言う旨を伝えられました。手元にある3万円以内で依頼するつもりだったが、実際は10万円と言われ契約。親族に高額だと言われ、消費者センター経由でクーリングオフを申し出たが、「電話での訪問要請なのでクーリングオフの対応はできない」と拒否。
鍵のレスキューは遺憾の意を表明
今回の業務停止命令に対し、鍵のレスキューは「極めて遺憾。法的措置を講じる」とwebサイトにて表明しています。
その中には、法令遵守をし、経産相の通達に沿ったものだと発表しています。何が遺憾なのか調べてみました。
来訪要請はクーリングオフの適用除外
鍵のレスキューにリンクがあった近畿経産業局に資料を見ると、
クーリング・オフができないもの(特定商取引法第26条第6項)(訪問販売であっても特定商取引法第4条から第10条までの規定を適用除外されるもの)その住居において売買契約等の申込みをし、又は売買契約等を締結することを請求した者に対して行う訪問販売・販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく、消費者の「請求」に応じて行うその住居における販売等
https://www.kansai.meti.go.jp/4syokei/soudan/jirei/jirei0_1.html
と言う記載がありました(令和3年6月17日)。
鍵のレスキューは、電話で鍵開けなどの依頼があったので、訪問要請とみなし、クーリングオフの適用には当たらないと言う主張です。
消費者庁は解釈を明確に
2021年8月18日に消費者庁は、「表示価格と請求額に大きな差がある場合、訪問要請には当たらず、クーリングオフの適用除外ではなくなる」と言う 、法第 26 条第6項第1号関係:「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売 買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者」の解釈を明確にしました。
これにより、電話の時点で料金を詳細に伝えず、表示料金とあまりにも乖離している請求額の場合、クーリングオフの適用対象となることが決定されました。
鍵のレスキューはなぜ法的措置を講じるのか
鍵のレスキューが法的措置を講じると表明していますが、なぜなのでしょうか?
おそらく、事例にあったクーリングオフ対象が遡及にあたるからだと思います。先ほど述べた特商法の解釈は令和3年の8月。それに対し、他の事例は令和2年です。
法律は不遡及が原則なので、この辺りで法的措置を講じるのではないかと考えられます。
高額請求に遭わないための注意点
鍵開けや鍵作成で高額請求に遭わないための注意点をご紹介します。これらを守れば、法的に悪い鍵屋さんにあたらずに済むと思います。
鍵のトラブルは鍵屋さん以外を利用する
鍵紛失による鍵開けや鍵交換は、鍵屋さん以外を利用すると安く済むことが多いです。例えば、マンションなどの管理会社や火災保険の付帯サービス、JAFなどのロードサービスなどです。これらを使えば、鍵屋さんよりも圧倒的に安く済むことが多く、高額請求トラブルが起こりにくいです。
事前に料金の詳細を聞く
今回のケースは事前に詳細な料金が伝えられず、現地での見積もり後に契約をしてしまうことで起こったトラブルです。事前に詳細な料金が伝えられていれば、その業者に依頼するかどうか判断がつきます。
鍵屋さんも現地を見てみないとわからないことがあるので、料金の上限や事例などを聞いておきましょう。
見積もりを見て冷静に判断する
家の鍵が開かなくなるとどうしても冷静な判断ができなくなってしまいます。そのため、一旦見積もりをもらってから、インターネットで相場を調べたり、他の業者に聞いて見たりして、その見積もりで契約をするか判断しましょう。
高額請求ならクーリングオフ
もし、事前に聞いていた料金よりも明らかに高額な場合は、クーリングオフを行いましょう。ただ、いくらならクーリングオフの対象かわからないので、消費者センターに相談してからの方が確実です。
総括
今回の事例では、事前の料金の5~6倍かつ10万円を超える請求額に対してクーリングオフを行わなかったことが業務停止の原因となりました。
今後、ホームページに安い料金を表示して集客する方法は減っていくと思われます。また、事前の料金説明や契約方法の見直しが業界全体で行われると思われます。
ただ、消費者があまりに強くなりすぎて、適正価格でもクーリングオフになることは、鍵屋さんの商売が成り立たなくなることを意味しています。
消費者も鍵屋さんも困らない適正価格で営業が行われることを願っています。
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